福嶋幸平 個展「Afterimage」
会期:2024年5月11日(土)-6月2日(日)
※会期延長
開廊時間:13:00-19:00
休廊日:月曜、火曜
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-10-1サンデシカビル1階
この度、当ギャラリーで三年ぶり、三回目となる福嶋幸平の個展では、今までの発表してきた作品から大きく進化させ自然の動的な動きを写真という制止したメディアで表現した意欲的な新作を発表いたします。
福嶋幸平の作品は、日常的に用いられているデジタル技術の限界やバグというエラーがもたらす情景の中に新たな可能性を見出しました。写真の中に現れるバグは、現実と仮想の境界を曖昧にし、観る者に独自の解釈と感覚を与えます。その作品は、テクノロジーがもたらす不完全さや混乱の中に秩序や美を見出す視点を提示しているように見えます。
是非この機会に福嶋幸平の新作をご高覧頂ければ幸いです。
・ステートメント
千変万化する自然を、写真という静止したメディアでどう撮るか、腐心してきた。
大学卒業後の2012年頃から、自然の流れや移ろいを表現するために、長時間露光を用いて滝や山々を写した〈山水〉シリーズを発表した。同じく大自然の動きを撮影した、動画形式の〈theophany〉シリーズを制作。当時は自然の美しさや怖さ、崇高さに関心が向いていたように思う。
その後は、自然への関心を保ちつつも、テクノロジーの面白さ、メディアの異質性への関心から〈cubism〉シリーズや個展〈mounds〉を発表した。
今回の展示〈Afterimage〉は「自然」と「メディアの異質性」というこれまでの関心事の延長線上にある。
最北は新潟、最南は沖縄まで、日本各地で撮ってきた山や滝などの自然をモチーフにした。撮影してきた動画データを意図的に破壊し、動画の動いている部分だけにノイズが走るというバグを発生させた。
バグという現象を選んだのは、メディアの内在的要素に起因するからである。たとえば古くからある長時間露光という技法は、外光を長時間イメージセンサーが記録したに過ぎない。いわば外在的要素に起因している。たいして今回のバグは本来メディアが持っている特性を、意図しない形で露呈させたものである。
写真を初めて見た人々が、魂を抜かれると恐れたように、動いているものが固定されるとは本来、奇妙なことである。現代の私たちは見慣れてしまったが、写真というメディアは異質なのである。
このようなメディアに内在する異質性を、今回の展示で感じて頂けたら幸いである。
福嶋幸平
・略歴
福嶋幸平
1989年東京都生まれ。横浜美術大学卒業。自然そのものを山水画の構図に倣って撮影してきた一方で、近年では人々が普段接するテクノロジーとそれが生みだす環境の変化を「風景写真」として作品化。日常風景に溶け込んだテクノロジーの異質性を、地図検索エンジンを始めとした身近なテクノロジーを用いて露呈させる。古典的な構図の踏襲や、積極的なテクノロジーの使用といった多角的な手法により、現代における芸術写真の在り方を模索している。主な受賞に2017年「第20回 岡本太郎現代芸術賞」入選や2017年「第6回 都美セレクション」入選、2017年「横浜美術大学学長表彰」優秀賞 等がある。