山口達典 個展「2199年」

2022年7月2日(土)-2022年7月17日(日)

13:00-19:00(月曜休廊)

TAKU SOMETANI GALLERY

東京都渋谷区神宮前2-10-1サンデシカビル1階


この度、TAKU SOMETANI GALLERYでは、山口達典の個展「2199年」を開催いたします。

山口は1996年、広島県出身のアーティスト。2022年に広島市立大学大学院芸術学研究科博士前期課程を終え、現在は東京を拠点に活動しています。壁画のようなテクスチャーのペインティング、古風なアニメーション調のロボット型の立体を組み合わせ、「ロボットが絵を鑑賞し、人間を学んでいる」という特異な状況それ自体を作品として発表している山口は、それを通して寓意的に私たちの社会の可能性の一つ、そして芸術が私たちにとって持つ意味を物語ります。

医療や経済、あるいは日々の細かい生活様式に深く結びつき、社会と生活のインフラを飛躍的に進歩させるテック産業と芸術の関わりは、既製品を要素として取り入れるダダのアーティスト、加速度的に効率化した社会の肌感覚を捉えた未来派の画家、あるいはベンヤミンによる芸術作品におけるアウラの所在など、私たちの生活とは直接には関与しないものの、美術史の随所でその関係を暗に示唆し続けてきました。しかし今日における両者の関係はさらに複雑になり、例えばある人工知能は与えられたワード、テキストを解釈し、思考し、判断し、絵画にすることさえも可能になるなど、ひと以外の存在が芸術の世界につくり手として関与するほどになりました。

山口の作品は「神話の時代」と題される現代の風景や静物を描いたペインティングのシリーズ、それからアニメ調のロボットという組み合わせで展開されますが、彼はそこに「人類が滅んだ、もしくは極端に数を減らした世界でのこと」という世界背景を与えます。そうした作品の表層的なテイストは、一見すると日本の90年代から2000年代の日本のアニメや漫画といったサブカルチャーからの影響がうかがえる造形表現をもち、「ロボットが人間の描いた絵を眺めている」という状況設定そのものを提示する様子もナラティブ・アートの系譜に類するような物語性を感じさせますが、彼の狙いは物語そのものを創作することより、むしろ今日の社会における芸術とテクノロジー、そして人間の三者が含んでいる可能性の一つを示唆することにあります。

人間以外の存在が芸術に携わるようになった時、あるいは芸術の創造者という位置から人間が追われることになった時、私たちが自らの人間性の担保としてきた芸術と人類はどのような関係を結ぶべきか、もしくはそもそもが人間にとって芸術とはどのような意味と役割を持ってきのか、といった時代の進みとともに迎えるかもしれない可能性のいったんを、山口は作品のなかでアレゴリーとして含ませます。「神話の時代」シリーズとは、つまりすでにない世界の情景を描いているために与えられた名前ですが、またそれらはロボットからすれば何気ない、もしくは素気のない視覚情報に過ぎないかもしれませんが、しかしそれによって山口は意味のないように見える情報に意味を与え、残そうとする人間の素朴な精神の存在が芸術においてしめる役割を示唆し、再考を促す意図があり、テクニックやコンテクストの裏に隠れ、ともすれば忘れ去られがちな体温ともいうべき存在と芸術の関係を改めて見つめさせる狙いが、おそらくはその奥底にあるのではないでしょうか。

2022年 奥岡新蔵

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