北村早紀個展 蚊帳の 外で あそぶ
会期:2023年4月8日(土)- 4月28日(金)
開廊時間:13:00-19:00
休廊日:月曜、火曜
この度、TAKU SOMETANI GALLERY では、北村早紀個展 - 蚊帳の 外で あそぶ - を開催いたします。
北村早紀は1989年長崎県生まれ。2013年多摩美術大学美術学部版画専攻卒業、15年同大学大学院美術研究科版画研究領域修士課程修了。
木版画技法をルーツに、主に人物をモチーフとした作品を制作しています。
今回の展示では、所有者を失った個人の古写真の像の上に木版表現を重ねたシリーズを発表いたします。
是非この機会に、ご高覧頂ければ幸いです。
・アーティストステートメント
木版画技法をルーツに、主に人物をモチーフとした作品を制作している。作家の手(彫り)が加えられていない部分が摺りによって顕れる木版画の特性を「表層、空白、不在を摺りとる手段」と解釈し、それらを見つめ、可視化することを試みている。また人物という像が持つ解像度を曖昧にしながら、画面の中の物語や意味を削ぎ落とした「居る」ではなく「在る」ものとしてのポートレイトを模索している。
・展示概要
今回の展示では、所有者を失った個人の古写真の像の上に木版表現を重ねたシリーズを作ります。
主に1930〜1950年代ごろの個人が撮影したであろう私写真で、いずれも撮影者や所有者の没後に手放されたものです。
どのモチーフも被写体が誰なのか、何処なのか、誰によってどのような状況で撮影されたものか分かる手がかりはほとんどありません。
撮影時には所有者、家族にとって既知であった被写体の個人名、意図、意味が喪失し「誰でもない誰か」として拠り所のない空虚な像に木版という色の表層を摺り重ねる、というのが今回のテーマです。
像から読み取れる物語や人物像の手がかりを探ることは、私の想像の枠から抜け出ないという意味でそれは私自身であり被写体を読み取ることとは齟齬があるため、行いません。
過去のシリーズでは、似たような試みとして自身の家族の古写真や古い印刷物を使用していました。
今回はさらに「見知らぬ人」であり「公的な役割を持たず私的な距離感で撮影された」ことを条件に集めた写真モチーフと対峙しています。
ただし、当時の限られた技術や物質的制限によって撮影された古写真には、現代のデジタル写真のように、無限に残すことができるそれとは全く異なる性質があると考えます。
遠い過去の撮影者には「残す」ことの意図が現代よりも明確にあり、それが私的な距離感で撮影されたのならなおさら、自身の人生において手の届く範囲から少しでも目の前の人物の存在を拡張させたいと、未来に向けられた密やかな眼差しを感じ取れることを、私は強く意識しています。
しかし、私の手にある写真はすでに所有者を失い、未来に正しく受け継がれる役割を放棄されたものばかりです。
いつかの誰かがごく身近な誰かに向けて残し、後代にわたりそれが引き継がれていくという時間と社会における「蚊帳」の外に放り出された像との、表層を織り交ぜた「あそび」を試みています。
・作家略歴:
北村早紀
1989年 長崎県生まれ
2013年 多摩美術大学 美術学部版画専攻 卒業
2015年 多摩美術大学 大学院美術研究科博士前期課程 絵画専攻版画研究領域 修了
東京を中心に活動
主な展覧会:
グループ展「It’s All Les」(アキバタマビ21、東京、2023)、個展「By Far the Side」(岩田商店ギャラリー、三重、2022)、個展[Nobody Sings, Nobody Sleeps.](Green thanks supply、 東京、2022)、2人展「 」(MIDORI so. Bakuroyokoyama,、東京、2022)、個展「Not found mini」(tsugi、福岡、2022)、グループ展[ON PAPER](TAKU SOMETANI GALLERY、東京、2022)、個展[Never died yet] (Green Thanks Supply、東京、2021)、グループ展『Ordinary than Paradise 何事もなかったかのように』(アキバタマビ21、東京、2021)、「Portrait展」(青山Spiral、東京、2019)
作家WEBページ:https://www.kitamurasaki.com/