“執着心“を主なテーマに、版画だからこそ出来る表現を追求し制作活動を行なっています。
その作品は、時には身にまとう衣服であり、時には作家自身や身近な人をモチーフにし、独特な版画技法により印象的な作品を発表しています。
・Artist Statement
鏡を見るたびに私という名の誰かが映っている。物心ついた頃から自分の身体が自分のものとは思えない感覚をもっていた。何故手足が動くのか、何故身体が女性なのか、何故この身体が私なのか。鏡や写真に映っている人間が自分自身であると何故断言できるのだろうか。常に操縦席から覗いているような日常と、私自身の存在に疑問と興味を持ちながら私は版画作品を制作してきた。
版画制作を通じて身体と精神の距離は今までになく近くなる。感覚や精神で感じる自身の身体が版であると考えると、鏡や写真、自身の視界に映る私の身体は紙に摺られたイメージだと考えられた。自身の身体が版や写真となり切り取られ、感覚で感じている三次元から離れ二次元化されることにより身体の現実感が増し、私が実際に存在していることを理解することができた。
点は全ての事物の祖であり、点が集まり線となる、そして面となり、体となる。常に浮遊する自身の心情は様々な顔を持ち、身体との距離感がある私には一挙に捉える事が困難であった。だが、心情を点や線で分解し、画面の上で再構築することで心情がもつ様々な顔を表現するにまで至った。それをドライポイントという版技法と組み合わせることにより、二次元化された自身の身体に心情を強く刻み付けることが出来たのだ。そして、作品の中での「私」という名の一人の人間が完成した。
私は自身が何故存在するのか分からなかったが、自身の身体と精神の関係性とよく似た版画制作を行うことで自身についてより理解を深めてきた。噛み合わない身体と精神を繋ぎ合わせるためにも、版表現を通じて「私」自身を追求していくのだ。
個展「obsession」/2019/TAKU SOMETANI GALLERYより
・作家経歴
日:森 茜
英:Akane Mori
1993年 神戸生まれ
2016年 大阪芸術大学版画コース卒業
2017年 女子美術大学大学院美術研究科 版画研究領域 入学
現在在学中
活動歴
2015年「第40回大学版画展」町田市立国際版画美術館/東京
2016年「セミナリオ現代版画展」長崎
「関西8芸術大学ポートフォリオ展」成安造形大学/滋賀
「日米版画交流展」California College of the Arts/アメリカ
「FEI PRINT AWARD」神奈川
「大野城まどかぴあ版画ビエンナーレ」福岡
2017年「浜松市版画トリエンナーレ」静岡
2019年「ミツドモエ展」Art Complex Center/東京
2019 年「第43回大学版画展」町田市立国際版画美術館/東京
「セミナリオ現代版画展」南島原市商工会賞受賞
収蔵
町田市立国際版画美術館